多岐に渡る学問のフィールド

みなさんは、学問というとどのようなものを想像しますか?学問とはその文字通り、問を学ぶことであり、それは即ち勉強の延長線上にあるものです。学問という言葉自体はそこそこ耳にするものの、実際問題この学問について理解している人、あるいは修めている人というのは、そこまで多くはないのではないでしょうか?実際、日本で暮らしている場合に「学問」というものに触れる機会を得るのは、恐らく高等学校からではないかと思います。それというのも、小学校・中学校の義務教育期間に於いて行われる教育というのは、大抵の場合が日常生活を生きる上で必要になるものは、あるいは思考の訓練などの役割を担ったものであり、それ自体を勉強することにそこまで大きな役割を担っていないからです。しかしながら、自由教育になる高校にはいるとその限りではありません。国語は現代文と古典に、理科は化学と物理と生物に、英語はリーディングとライティングとオーラルコミュニケーションに、社会は現代社会と公民と倫理、世界史、日本史、地理に細分化され、それぞれ別の科目として扱われることになります。これは言うまでもなく、今までの「国語」「英語」「理科」「社会科」という分類が概要的なことを教えていたということの証明であると同時に、高等学校以降に於いてはそれらを更に細分化して、掘り下げていくのだということを示唆しているに違いありません。こうして、勉強というのが日常生活に利用されるものから、勉強することそれ自体に目的を持つものへと変化することになり、それは即ち「学問」の門を敲くことであるといえるでしょう。そうして高校時代に於いて敲き続けた学問の門は、大学に進むことによってようやくその入口を開くことになります。しかしながら、学問の門というのは非常に多く存在しています。学問というのは多くの場合、一人がいくつもの門をくぐることを許してくれるほど甘いものではなく、本当に自分が学んでいきたいと考えている1つの門を選んでそこをくぐる必要があります。つまり、大学に入るにあたって、どの学問の門を選択してその中へと歩を進めるか、というのはその後の勉強のみならず、人生設計や、あるいは今後の社会に対しての大きな選択の1つとなり得るのです。そのため、この門の選択には熟慮が必要ですし、自分にとって最も適切な門を選ぶことは自分だけではなく、様々な面においても有益なこととなるでしょう。なぜ学問を勉強することが「社会」のためにも有益であるのか?それは、学問というのがいずれも、少なからず実利を孕んだ存在であるがためです。どこに対して有益であるのか、というのはそのフィールドによって大きな差異がありますが、大きく分けると「文明益」と「文化益」の2つになるのではないでしょうか。前者は即ち、学んだ学問の内容がそのまま文明の中で新たな技術や、新たな発想を生み出し、私たちの生活や人生そのものに対してそれを豊かにする効果を持ち得るということでありますし、後者ならば私たちの思想生活や、あるいは文化の発展に対して大きな有益性をはらんでいる、と考えて良いはずです。そこでここでは、まず学問のフィールドを大きく4つに分けて、それぞれがどのような学問をはらんでおり、それぞれが「文明益」と「文化益」どちらに所属しているものであるのかについて良く考えていきたいと思います。まず、1つ目に考えるのは「人文科学」です。名前は良く聞くフィールドですが、その反面でこのフィールドがいったい何を研究する学問であるのか、というのは実際のところわかりにくい分野でもあります。人文科学とは即ち、「人類」とその「文化」について研究する分野です。具体的に所属する学問について挙げるのならば、人間の存在理由について研究する「哲学」、人類の歩んできた歴史を研究する「歴史学」、信仰と人間の関係を研究する「宗教学」、我々の操る言語体系について研究する「言語学」、人間の持つ精神活動を研究する「心理学」、心理学の一分野として、より詳しく人間の精神について研究する「精神分析学」、人類の多岐に渡る文化についてより詳しく研究する「文化人類学」、文化人類学から派生し、各所に伝わる原初の神話を研究する「神話学」、そして現在に残された遺跡や旧跡から歴史上の事実について実証する「考古学」などがこの人文科学のフィールドに属しています。心理学や精神分析学など、現代の精神医療に対して公益を持つ学問もありますが、人文科学のその多くは「文化益」に所属していると言っていいでしょう。我々のルーツを辿り、我々の存在についてより詳しく知ることで、人類や文化に対する尊厳や誇りを持つことは、間違いなく文化を形成していく中で非常に有益なものとなるのではないでしょうか。そして2つ目に考えるのは「文化芸術学」です。このフィールドに所属するのは、各時代に残された多くの文章について研究する「文学」、人間による建造物について研究する「建築学」、世界中の音楽について研究する「音楽学」、多くの絵や造形などについて研究する「芸術学」、20世紀に生み出された新たな媒介である映像について研究する「映画学」、そして様々な時代に残される写真について研究する「写真学」などです。これらは、その内容から見ても分かるように、間違いなくそのすべてが「文化益」の学問であるということが出来ます。これらについて研究したところで、私たちの日常生活が豊かになるということはまずもってありませんが(建築学だけは例外でしょうか?)、そのかわり、これらについての研究が進むことはそのまま我々の思想生活や文化観に直結するということが出来るでしょう。これらもまた重要な学問のフィールドです。そして3つ目に考えるのは「社会科学」です。これは即ち、我々の生きる社会というものがいったいどのように構成されており、どういったシステムを持っているのか、ということを研究するフィールドになります。主にここに所属しているのは、人類の行って来た、行っていく政治について研究する「政治学」、世界を席巻する貨幣社会について研究する「経済学」、我々を縛り付ける枷でありながら、自由を保証する檻でもある法律を研究する「法学」、教える、ということについてその方法や歴史を追求する「教育学」、事象の分布や確率などについて研究する「統計学」、そして、経済学と密接に絡み合いながらも、よりミクロな視点から研究する「経営学」などがこの社会科学のフィールドに属しているといえます。これらの学問は、いずれも社会の構造や成り立ち、仕組みについて研究していくもので、これらを追求することはそのまま未来の社会構造に対して何かしらの貢献があるものであると考えられるため、「文明益」の学問フィールドであるということが出来るでしょう。そして最後に、4つ目に考えるのは「自然科学」です。文字だけを見れば理科のことかとも思えますが、実際にはより広いフィールドになります。自然科学とは即ち、この世界を構成している原理や基礎について追求していくもので、何も自然のことだけについて研究していくわけではありません。例えを挙げるのならば、重力などの基本中の基本原理について研究する「物理学」、人間を初めとした全ての生物の構造について研究する「生物学」、世界を、より小さな単位から研究する「化学」、他の学問に流用することのできる計算方法について研究する「数学」、生物学をもとにして、疾患等についての治療を研究する「医学」、そして、地球の成り立ちそれ自体に対して研究する「地理学」などがこの自然科学というフィールドに所属しています。これらは、いずれもその研究の中で新たな原理や新たな発明が為され、間違いなく私たちの文明に対して強く影響を及ぼすことから「文明益」の学問フィールドであるということが出来るのではないでしょうか。

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